「働き方改革関連法案」とは何か? その背景と狙いをわかりやすく解説

2018年5月31日に働き方改革関連法案が衆議院で可決された。

安倍晋三首相が今国会の最重要課題と位置付ける働き方改革関連法案は31日の衆院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決され、衆院を通過した。与党は週明けの6月4日にも参院で審議入りさせたい考え。立憲民主などの野党は対決姿勢を強めるが、政府、与党は20日までの会期を延長する方針で、成立する見通しだ。首相は改めて成立への決意を表明した。

ロイターより引用

テレビなどでは、この法案に対して、「残業代ゼロ法案だ!」、「過労死を助長するものだ!」といった批判や映像が流されるばかりで、そもそもどういった背景と狙いがあるのかは、放送されません。

この記事では、この法案の背景や狙いを解説していきます。

そもそも「働き方改革」とは何か!?

働き方改革とは、一億総活躍社会の実現のための改革の一つです。

一億総活躍社会は、男性女性、年齢、障害の有無にかかわらず、個性を発揮して、生きがいを感じられる社会。そして、そして、一人一人が活躍することで経済成長させ、それを分配することによって社会保障を実実させるための仕組みのこと。

首相官邸ホームページより要約

上記の目標を達成するために、働き方を変えようというものです。

これを踏まえたうえで、「働き方改革」を定義すると、こうなります。

働き方改革とは、一億総活躍社会を実現するために、多様な働き方を認め、労働制度の抜本的な改革を行うことによって、経済の成長と分配の好循環を生み出すための改革のこと

2016年に安倍首相が働き方改革実現会議が発足して以来、首相官邸主導で行っていて、安倍首相の肝入りの改革ということになります。

さて、なぜこのような改革を行う必要があるのでしょうか?

働き方改革の背景

労働人口の減少

日本では、少子高齢化が叫ばれて久しいですが、労働人口はどのくらい減少しているのでしょうか?

次のグラフは労働力人口(生産年齢人口)を表したグラフになっています。

労働力人口は、15歳~64歳の範囲にある人口のことを言います。

参照;国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口

このグラフによれば、1995年に8000万人を記録して以来、徐々に下落傾向が進んでおり、2060年には4418万人と推計されています。

もちろん、近年の会社では定年制がない会社や、65歳以上でも働ける会社などが増えてきましたが、いずれにせよ働ける人の割合が少なくなっているのは事実です。

長時間労働の問題

長時間労働は、日本の大きな問題の一つで、世界的に見ても労働時間は群を抜いています。

最近では、長時間労働により過労死や精神障害、また育児や家事に時間が取れないことが問題になっています。

次のグラフを見ても、日本の長時間労働の現状がわかると思います。

参照;データブック国際労働比較

とりわけ、日本には残業に対して善の考えがあり、社員が帰りづらい雰囲気や、サービス残業など、グラフでは捉えられない問題も内包しています。

労働生産性の低迷

日本は働いている時間の割合は多いものの、その生産性は低いとされています。

公益財団法人日本生産性本部によると、日本はOECD29か国の中で、14位となっている。

たくさん働くことで、生産性が上がるというよりも、むしろ長時間働くことで、効率が悪くなってしまい、生産性が減少しているのが日本の労働環境の現状となっております。

労働力が少なくなり、また労働生産性も低いと、日本の経済成長は見込めません。

テレビにおいては、長時間労働ばかり取り上げられますが、この労働生産性というところにも注目しなければなりません。

働き方改革関連法案の中身

労働時間の減少、長時間労働、労働生産性の低迷などの問題が背景となり、その問題を是正するために、法案を審議し、可決しました。

冒頭でも書きましたように、働き方改革関連法案が衆議院で可決されました。

関連法案となっているだけあって、この法案は次の8つになります。

「雇用対策法」、「労働基準法」、「労働時間等設定改善法」、「労働安全衛生法」、「じん肺法」、「パートタイム労働法(パート法)」、「労働契約法」、「労働者派遣法」のことを言います。

もう少し、わかりやすくまとめると、次のようになる。

第1の柱:働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法改正)

第2の柱:長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等(労働基準法等改正)
時間外労働の上限規制の導入
長時間労働抑制策・年次有給休暇取得促進策
フレックスタイム制の見直し
企画型裁量労働制の対象業務の追加
高度プロフェッショナル制度の創設
勤務間インターバル制度の普及促進(労働時間等設定改善法改正)
産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法・じん肺法改正)

第3の柱:雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
不合理な待遇差を解消するための規定(パートタイム労働法・労働契約法改正)
派遣先との均等・均衡待遇方式か労使協定方式かを選択(労働者派遣法の改正)
労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
行政による履行確保措置と裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

この中でポイントとなるものを赤字にしました。

時間外労働の上限規制の導入

本来、労働基準法では、1日8時間、週では40時間労働ではありますが、「36協定」を利用すれば、1か月45時間ほど残業させることができました。

また、この「36協定」には特別協定があり、労使協定を結んでいると、無制限には働かせることができました。

これでは、長時間労働は是正できないですよね。

そこで、法案では、1月100時間、2~6か月で平均80時間と上限を設けました。

無制限で働くことをなくし、そこに上限を設けたのは画期的でした。

高度プロフェッショナル制度の創設

そもそも高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務のことを言います。

例えば、金融ディーラー、コンサルタント、研究職などの一部の職種で適用される見込みです。

また、この制度が適用されるのには要件があります。

~要件~

(i) 年収1075万円以上

(ii) 年104日 4週4日以上の休暇

(iii) 2週間以上のバカンス

(iv) 月80時間超え労働者の健康診断

などとなっております。

この法案にとって、時間給でなくなるため、成果を出せば給料がしっかりともらえ、なおかつ休むこともできるということになります。

しかし、多くの批判もありますので、後で取り上げます。

不合理な待遇差を解消するための規定(パートタイム労働法・労働契約法改正)

いわゆる同一労働・同一賃金に関する法律のことを言います。

非正規労働者と正規労働者は同じ業務をしているにも関わらず、給与に違いがありました。

しかし、この法案が可決されると、同じ労働でありながら、同じ給与を得ることができます。

非正規社員にとっては、収入がアップするため、今よりもより豊かに生きることができます。

ここでは主要な部分だけを取り上げましたが、他にも様々な点で働き方が変わる可能性があるため、注視していきたいですね。

野党は何を批判していたのか?

働き方改革関連法案を巡って、マスコミは連日野党の批判を取り上げていましたが、どういった部分を批判していたのでしょうか?

ポイントとなるのは、先ほどの高度プロフェッショナル制度の創設についてです。

先ほどの要件とは別に、次の要件もあります。

~要件~

(i) インターバル規制、深夜業回数規制

(ii) 1~3か月単位の上限規制

(iii) 2週間以上のバカンス

(iv) 月80時間越えの労働者の健康診断

上記の中で一つだけ満たせば、会社は労働者を働かせることができる。

そうした場合、むしろ過労死が増えてしまうのではないかという批判がある。

また、日本経済団体連合会(連合)は、年収400万以上まで引き下げるべきではないかと提案しています。

つまり、現法案では、年収1075万円以上だったのが、400万になってしまうと、ほとんどの国民がこの制度の下で、働く可能性になってしまいます。

この点についても、野党が批判しました。

また、裁量労働制での厚労省データの不備があったため、データをしっかりと取ったうえで、法案にしろという声もあります。

野党の批判も一定程度納得する部分もありますが、みなさんはいかがですか?

まとめ

働き方改革関連法案について、衆議院で採決が終わり、今後参議院での審議となります。

いずれにせよ、政府がいくら法案を整えたところで、労働者を雇うのは企業です。

今後、この法案についての行方を注視するとともに、企業が労働環境をしっかり整えられるのかというところがポイントとなりそうです。

※追記

2018年6月28日

働き方改革法案が参議院厚生労働委員会で与野党で質疑が行われました。

そして、野党の国民民主党が与党と合意しました

その結果、6月29日に参議院本会議で可決され、成立することになりました。

2018年6月29日

参議院でも可決されました。

労働時間規制に関しては、「原則月45時間、年間360時間」と定められ、上限は年間で720時間、月では100時間未満に規定されました。適用されるのは、大企業は2019年4月~、中小企業は2020年4月~

同一労働同一賃金は、大企業は2020年4月~、2021年4月~となっています。

プロフェッショナル制度は、2019年の4月から適用されます。

この働き方改革によって、労働者の働き方がどのように変わるのか、注視していきたいです。

 

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